おとなの勉強会

勉強会といっても一人ですけれど、興味のあることを書いていきます。

地震のことを知るにはどのサイトを見ればいいのか

はじめに

熊本地震はとても心配である。多くの人が亡くなられた。御冥福をお祈りするしか僕はできない。今後どうなるのか、ニュースを見てもまだまだ収束の兆しは見えないとも言っている。川内原発は停めないと政府は早々に宣言した。本当に大丈夫なのだろうか心配である。

幸いなことに僕は被災したわけではない。でも他人事でない。今一番僕が知りたいことはこの地震が何なのか、このまま収まってくれるのか、それとも何かの前触れ、前兆なのかということである。地震予知の現状はどうなのか、このような地震にはまだ予知はできないのか? 知りたいことがたくさんある。

たくさんのサイトがある

それでインターネットで調べてみた。ネットで調べようとするのは大変だ。たくさんのサイトがある。どれが正しいのか、どれが怪しいのか、とりあえず政府関係、官公庁関係のネットを調べてみることにした。少なくとも間違いは少ないはずだと思ったのだ。

 サイト  評価 概要
首相官邸ホームページ × 生活情報のみ。今後この地震はどうなるの? という情報もほしいのだけれどもそれについての言及なし「熊本地震被災者の皆さまへ 政府応援情報」だって、政府は支援はしてくれず応援しかしてくれないんだ。
防災情報のページ - 内閣府 大した情報はなし
中央防災会議 - 内閣府 × 安部首相を長とする会議、2016年2月16日以降の開催なし。熊本地震に対する言及なし
地震予知連絡会|トップページ × 熊本地震に対する言及もなし、3月30日以降の更新なし、この会必要あるのかな? と思えるほどの素気なさ
復興庁 × 熊本地震に対する言及なし。復興庁は東北だけだから熊本には興味なし。いいのかな?
地震本部 トップページの情報は活断層の評価のみ。その資料を見ても気象庁や防災科学研究所や産総研の資料のコピペ
総務省 トップページに熊本地震に対するリンクあり。被災者された方への情報はPDFにまとめられている。簡潔で見やすい文書で、被災したときに便利かもしれない
文部科学省ホームページ トップページに熊本地震に対するリンクあり。基本素気ない。「被害情報」なるPDFには文科省としての取り組みが書いてあるけれども……
国土交通省 トップページに熊本地震に対するリンクあり。基本素気ない
厚生労働省 △  トップページに熊本地震に対するリンクあり。厚労省だけあって健康情報中心である。項目の羅列で、知りたい情報を探そうと思うと戸惑うかもしれない| 
農林水産省/ホーム トップページに熊本地震に対するリンクあり。4月18日に熊本地震に関する会議が開かれてその概要が載せられている。被害状況の把握から支援物資の供給状況まで、対応の早さがうかがえる。
経済産業省のWEBサイト / Ministry of Economy, Trade and Industry トップページに熊本地震に対するリンクあり。一日二回、コンビニ・スーパーの営業状況や、電力・ガス等のインフラの状況を伝えている。必要最小限の情報提供、見やすいと言えば見やすいけれど
環境省へようこそ! トップページに熊本地震に対するリンクあり。災害廃棄物に限った対応。日々の対応が示されていて活動がわかりやすい。トイレや屎尿処理までのケアをしていることを知った。
防衛省・自衛隊 トップページに熊本地震に対する活動状況あり。ただ活動してますという報告だけで、何をしているのかは伝わらない。どういう支援をしているのかを具体的に書いた方がいいと思うけれども……
GSI HOME PAGE - 国土地理院 トップページに熊本地震に対するリンクあり。人工衛星による地表表面の歪みの可視化や、ドローンによる地割れ現場の撮影など
気象庁 Japan Meteorological Agency トップページに熊本地震に対するリンクあり。基本素っ気ない。地震があるとテレビは必ず気象庁の記者会見を行うから、ネットよりテレビを見てくれってことだろうか
NIED|防災科学技術研究所 トップページに熊本地震に対するリンクあり。たぶん地震学術的データは官公庁関連では一番充実しているかもしれない。研究所の対応についても記載あり。「新強震モニター」はアプリまでなっている。全国の地震計のリアルタイムの値が見られる
気象庁|東海地震について | 地震防災対策強化地域判定会(判定会) × 通称「判定会」。東海地域にのみ感心があるみたいで、熊本には興味なし
測地学分科会:文部科学省 × 熊本地震の記載なし、去年からのサイトの更新なし。やる気がまったく感じられない
AIST: 産業技術総合研究所 地質調査総合センターが産総研内にあって活断層のデータが載っている
NICT - トップページ | NICT-情報通信研究機構 トップページに熊本地震に対するリンクあり。DISSANAというシステムがあり、被災地での災害に関係あるツイッターの構文を分析して地図上に載せるというシステムを開発した。取り組みは面白いけれども、使えるかなと考えると少し疑問
JAMSTEC | 海洋研究開発機構 | ジャムステック × 地震津波海域観測研究開発センター」という組織がある。今回の地震は内陸部なので活躍する機会はないのかな?」
消防庁 一応活動状況のPDFはあるけれど……
トップページ|警察庁 トップページに熊本地震に対するリンクあり。ご活躍の写真が載せられておりますが……
宮内庁 × 熊本地震に関する記載なし
国はどこが仕切っているの?

ネットで見る限り、各省庁で情報が散らばっていて、こちらが知りたい情報を取り行こうと思った場合、どの官公庁のサイトを見ていいのかかなり戸惑うと思う。 地震について知りたい情報は以下の二つだ。

  1. 地震そのものに関する情報、今後どうなるのか、それは地震に関する最近の研究、それに基づいた今回の熊本地震の評価について、より具体的に言えばこの地震に連動して阿蘇山は噴火するのか、原発がある地域へ震源域は移動しないかのかなど。
  2. 被災された方への情報、被害状況、インフラの損害、およびその復旧について、支援の状況、公的な救済の手続、ボランティアの登録や、活動方法について

その二つの情報は対応する各省庁のサイトに分散してしているという印象である。政府としては各省庁で分散している情報を一元化するような「震災ポータル」のようなものが必要だ。少なくとも被災された方に対するサービスとして、各省庁を横断的にまとめたサイトを絶対に作るべきだ。

ただそのような試みはないわけではない。それが「地震本部」である。これは先に延べた地震に必要な情報の一つ目である。つまり調査研究について一元化するという目的の組織らしい。

地震本部のロゴを見ると、「地震に揺らがない国にする 地震本部 政府 地震調査研究推進本部」というのが正式名称みたい。「地震に揺らがない国にする」って一体何? 「一億総活躍社会」とか「すべての女性が輝く社会づくり」的なキャッチフレーズ臭がプンプンするし、そもそも地震で揺らいでるのにどうやって揺らがないようにできるの? とツッコミ入れている自分がいたりする。文科省を窓口とした組織らしい。 この「地震本部」がどういう組織かと言うと、

当面10年間に推進すべき地震調査研究の目標として

  1. 海溝型地震を対象とした地震発生予測の高精度化に関する調査観測の強化、地震動即時予測及び地震動予測の高精度化
  2. 津波即時予測技術の開発及び津波予測に関する調査観測の強化
  3. 活断層等に関連する調査研究による情報の体系的収集・整備及び評価の高度化
  4. 防災・減災に向けた工学及び社会科学研究との連携強化

ということらしい。今回の地震は海溝型地震ではないようなので、地震発生予測の高精度化は難しいということなのか。

http://www.jishin.go.jp/main/img/p_shokai01_kosei.gif

この「地震本部」に関連する「中央防災会議」も、連携するとされている「地震予知連絡会」も「地震防災対策強化地域判定会」も「科学技術・学術審議会測地学分化会」もサイトを見る限り熊本地震に対して沈黙している(2016年4月23日現在)。そもそもこの「地震本部」が機能しているのか疑わしくなってくる。

この組織のあり方も疑問に思えてくる。例えば気象庁のサイトに「国の防災体制と気象庁の役割」というページがある。

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/img/yakuwarizu.jpg

面白いのは、この図を見る限りにおいて「地震調査研究推進本部」の名前が見当らないことだ。 僕はおもわず勘繰ってしまうのだけれども、たぶん色んな省庁で色んな地震の研究をしていて収拾がつかなくなったのだろう。それで文科省が仕切るということで、研究推進本部を立ち上げてからみたものの、面白くないのは気象庁で……なんて拭い切れない縦割り行政の悪弊が残っているとなんて考えるとちょっと楽しい。

備えなくてはいけない

ちなみに「地震本部」のサイトで思わず読んでしまったのは、活断層のレポートだ。 http://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/regional_evaluation/

僕の住んでいる群馬県高崎市の近くにも深谷断層というものがあり、今回熊本地震で問題になった断層帯と比べても地震の確率は決して低くないことを知ってびっくりした。

深谷断層帯全体が同時に活動する場合 M7.9 程度

今後30 年以内の地震発生確率 ほぼ0%-0.1%

http://jishin.go.jp/main/chousa/15apr_chi_kanto/ka_7.pdf

比較として熊本地震で問題となった布田川断層のレポートを見ると

布田川断層帯全体が同時に活動する場合  M7.5-7.8 程度以上

今後 30 年以内の発生確率 ほぼ0%-0.9%

http://jishin.go.jp/main/chousa/13feb_chi_kyushu/k_11.pdf

僕はシロウトだから、この発生確率というものが、0.1%(深谷断層)と0.9%(布田川断層)の違いが気の遠くなるような差なのか、大した差がないのかはわからない。

おそらく南海トラフ地震と言った海溝型の巨大地震ぐらいしかまだ地震予知の研究レベルは達していないわけだし、今回の熊本地震のような地震は日本中の至るところで起きても不思議ではないと覚悟すべきなのだ。